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仙台の夜に泣いて

旅の話
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これは、僕が仙台という大きな、街であった一日のお話です。

気楽な気持ちでよんでみてください。

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はじまりは

仙台に到着したのは午後のことだった。旅の始まりは快調――のはずだった。だが、中尊寺を訪れた俺は、寺の荘厳な雰囲気を味わう前に、足元の苔むした石畳に足を取られて盛大に転倒した。

「うわっ!」

手をついた瞬間、嫌な音がした。恐る恐るスマホを拾い上げると、画面は蜘蛛の巣のようにヒビ割れていた。旅の思い出を撮影しようにも、これではまともに使えない。先行き不安な気持ちを抱えながら、俺は仙台市内へと戻った。


夜。俺たちは仙台市内の居酒屋で宴会を開いていた。会社の後輩や同期たちと飲み、食べ、そしてコンパニオンを交えた大騒ぎ。酒が進むにつれ、皆のテンションも上がっていく。そんな中、俺にやけにべったりとくっついてくるコンパニオンがいた。

「お兄さんだけでいいから!」

「俺?えっ?1人?」

どういうことだ? 彼女はなぜか俺にだけ延長を勧めてくる。酔った頭で「いや、これはちょっと怪しい」と警戒し、料金を聞いてみた。

「延長、25,000円です」

危ねぇ。危うくぼったくられるところだった。心の中で胸を撫で下ろしながら、「いや、遠慮しとくよ」と断った。


宴会の後、俺たちは「次、どこ行く?」と相談しながら近くの案内所へ。目に留まったのは、オッパイパブ。流れに乗るまま、俺たちはそこへ入ることになった。

そこは、照明がほんのりと落とされた空間。目の前には、柔らかそうな温もりと、優しく微笑む女性。普段なら「ただの遊び」と割り切れるはずなのに、その夜の俺は違った。

頬を伝う冷たいものに気づいたのは、女の子の指がそっと触れた瞬間だった。

「えっ?泣いてるの?」

「えっ?」

自分でも驚いた。指で頬を拭うと、確かに湿っている。思わぬ優しさに触れたせいか、閉じ込めていた何かが溢れたのかもしれない。

そして、気づけば延長していた。

後から知ったのだが、まあまあしていたらしい。

……まぁ、いいか。


店を出た後、後輩と二人でラーメンを食べに行った。しみるスープが胃に染み渡る。

「このままホテルに帰るか」

そう言いかけたとき、店に同級生の一人が入ってきた。

「どこ行く?」

「う…ん。まぁ、旅行だからな」

なんとなく流れで、もう少し夜を楽しむことに。

店を出ると、案の定キャッチの兄ちゃんたちが声をかけてくる。

「お兄さんたち、この後のご予定は?」

「どこかいい所ある?」

「もちろん、ありますよ!ちょっと待ってください!」

案内されたのはガールズバーだった。

店内にいたのは、女の子が5人、客は俺たちだけ。

「いらっしゃいませ。そちらの席にお座りください」

席に着くと、さっきの5人全員が俺たちのテーブルに座った。

(え? ここ、そんなサービスいいの?)

そう思ったのも束の間。

「女の子に一杯いただいてもいいですか?」

……まぁ、旅行だしな。


気づけば2時間ほど店にいた。だいぶ酒が入っている。

「今、いくら?」

店長に聞いた瞬間、冷えた空気が背筋を駆け上がった。

「8万円です」

「……は?」

完全にやられた。途中から何を飲まされていたのか、正直よく分からない。ただ、妙に酔いが回っていたのは確かだった。

文句を言おうにも、こんなところで揉めたくない。諦めて支払いを済ませ、店を出た。

その時、もう頬を伝うものはなかった。涙も枯れたのかもしれない。

ただ、虚無感だけが残った。


ふらふらとホテルに戻る途中、ポケットに手を突っ込んで気づいた。

(あれ? カードキーがない?)

酔いが一気に醒める。フロントで事情を話すと、再発行に2,000円かかると言われた。

「……マジかよ」

最後の最後まで散々な夜だった。

けれど、そんな夜も、きっといつかは笑い話になる。

そう思いながら、俺はベッドに倒れ込んだ。

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