6年前に付き合っていた彼女がいた。
同じ県内に住んでいるのだが、住んでいる場所が遠くて少しだけ遠距離のような形で付き合っていた。
それまであまりにもモテない人生だったから、初めて出来た彼女にかなり浮かれていた事をよく覚えている。
年齢も一つしか変わらないから、話題でも歳の差を感じるような事もなかった。
彼女は、学生時代にソフトボールをしていた。
僕自身も小学生の頃に4年間ソフトボールに汗を流していた。
それがお互いの共通点で、同じように運動が好きな子だった。
他にもFC岐阜のファンでよく応援に行っているそうだ。
僕自身がもっぱらやる方が好きだったから
テレビでやっているサッカーの事は、W杯で見るくらいでしかない……
それ以外は、あまり詳しくなかったから「そうなんだ」くらいにしか答えられなかった。
彼女は、サッカーの話だと沢山話をした。
俺自信は、その時になんて答えていたのか…たぶん、それとなく答えていたんじゃないかなって思う。今では確認のしようもない事なんだけれど。
そんな彼女と出掛ける時は、どんな所に行けば喜んでくれるんだろうって次に会うまでの計画をワクワクしながら考えていた。
でも、何回かデートを重ねる内になんだろう…言葉にならない歯痒い感覚があった。
これが倦怠期というやつか?
と思ったがあまりにも早すぎた。
そんな事を考えていても良くないとやっぱり次のデートの計画をワクワクしながら、考えていた。
彼女の誕生日が年明けてからすぐだったからその時に誕生日プレゼントを贈る事にした。
初めての彼女でどんなものを贈るのが正解なのか?分からなかったから友達に相談してみた。
すると、「とりあえず行ってから考えてみればいい」
と言ってアウトレットまで車で行く事にした。
その時は、冬の季節。
まだまだクリスマスで日にちがあったけど、カップルが仲良さそうに手を繋ぎながら次の店、次の店へと足を運んでいた。
こちらは、男2人だったけど、
彼女のプレゼントを買いに来たんだから、胸の中で自分を奮い立たせるように歩みを進めた。
「こういうのとか、どうだろ?」
着いた店は、女性物の小物を販売しているお店だった。
一生来ることもないだろうと、思っていたけど、まさか来る事になるとは。
どんなものがいいのか分からない。
とりあえず、店員さんに聞いてみるか。
「今度、付き合っている彼女の誕生日にプレゼントを渡したくて」
「そうなんですね、でしたらこちらとかどうでしょうか?」
オススメされた商品は、シンプルでありながら、上品で主張し過ぎておらず、それでもそこに存在感をしっかりとある可愛いらしい時計だった。
「これください!」
僕は、これがいいよね。と自分に納得させながらもそれ買う事にした。
誕生日の日に彼女と会った。
その日は、あいにく平日だった。
だから、仕事終わりの僅かな時間だけでもとお願いして彼女の家の近くのカフェで待ち合わせすることにした。
時計を見ると時刻は20時30分を超えていた。
時間は、遅かったけど。まだ間に合う。
彼女の元へと急いだ。
夜でもやっているカフェに着くと、こちらに向けて嬉しそうに手を振る。
席に着くと、「コーヒーをお願いします」
何だか大人になったなって思いながら注文をした。
彼女もある程度は、察しているだろうから
とりとめのない僅かな会話をしてすぐに
「はい、これ!」と言って彼女の為に買ってきたモノを渡した。
「開けてもいい?」
と言って何かに期待をしながら、包み紙を丁寧に開いていった。
小さな箱を開くと、そこには細いベルトに小さな時計版のケイトスペードが顔を出した。
彼女は、笑って
「ありがとう」と言った。
「良かった」と僕は言った。
それから何回かデートを重ねる内に歯痒い気持ちがモヤモヤに変わり、いつしかお互いに言葉を減ってくるようになった。
デートの帰りにそれを口にした。
「俺たち別れよう」
「えっ?……もういいよ。この前くれた誕生日プレゼントとは、別のものが欲しかった」
泣いているような、怒っているようなそんな表情をしながら言った。
「別のもの?」
そのまま繰り返し言葉にしていた。
頭の中が過去の会話を思い返してみるとそこに答えがあった。
いまさら、気づくのが遅かったけど。
「それにもっと女の子っぽい子と付き合いたいならそういう子と付き合えばいいじゃん!もっと自分の意見とかを言えよ。自分がないのかよ」
ここまで言われるとは、考えても見なかった。あまりの想像力が足りてなかったと言ってから後悔した。
彼女が言った「自分が無いのかよ」
自分ってなんだ?
何が好きなんだ?
あれから何年も経ったけど、相変わらずにその答えが分からない。
分からないというよりもその答えを避けているのかもしれない。
何も考え無いように過ごしていれば、無害で済むからと。
それでも「自分」が分かればもっと人生を楽に生きられるんじゃないのかと期待もしている所もあって、なんだか矛盾しているなと、
そんな事を思い出した。
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